SASADA YASUTO 2nd

artist

熱き想いを語る情熱の芸術家

今回のコラボレーション相手は、独創的な画風とアート界を飛び越えたさまざまなフィールドでの活躍で注目を集める現代美術家、笹田靖人氏。
彼の魅力は、その圧倒的な迫力と情熱を凝縮した絵。そしてその絵に対する熱い想いと、オーバーヒートするほどの熱量だ。ということで今回は、彼の溢れる想いを語り尽くすインタビューを敢行。
後半では、MEGUMIとの対談形式で、彼のヒストリーから芸術への姿勢や想いをお届けしよう。

笹田靖人(以下S) 今日は僕、かなり喋りますから(笑)。芸術家って寡黙で、作品を観て感じてくれって人が多いんですけど、僕はとにかく語ります。なぜかというと、もっとたくさんの人に僕の作品を観てほしいし、より想いが伝わってほしいからなんです。たとえば、僕の作品をぱっと観てどう感じますか? ただ観ただけだったら、細かくて格好良い絵だなって思うくらいだと思うんですよね。でも、作品には壮大なストーリーがあって、そのストーリーとか伝えたいことをたくさん込めているんですよ。

MEGUMI(以下M) 確かにただ絵を見るだけじゃ裏に込められた想いはわからないし、想像するだけだよね。語っているような人をあまり観たことがないし。

S そうなんです。芸術作品って、作家が生きている時にしか語れないんですよ。たくさんの想いを込めて描いているわけですから、その想いが勘違いされたまま評価されるのはやっぱり嫌。そもそも、僕は芸術の教育方法が良くないと思っているんですね。芸術大学では、”語らずに想像させろ”って言うんです。そもそも芸術には正解なんて無いのに、正解を教えようとするからおかしくなる。先生や賞の審査員の好みを考えて、傾向を意識したりなんて馬鹿らしいなって思うんですよね。自分の好きな絵を、熱を持って取り組むことに意味があるんです。売れない、食っていけないという作家は、結局黙っているからだと思うんですよね。

M そうなんだ、もったいないね。たしかに、絵の教育を受けていないアーティストが活躍していたりするかも。

S 教育にとらわれていない分良いのかもしれません。芸大はよく”ニート製造機”って呼ばれるんです。卒業後、デザイナーになればかなり良い方で、多くはまったく関係ない仕事に就く。僕が芸術家として生きていけているのは、やっぱりよく喋るからっていうのと、積極的に動いていくからだと思うんです。作品の意味を知りたいと思うのはもちろん、芸術に対する考え方に共感してくださったり、応援してあげたいと思ってくださったり、そういうところから絵が売れるんですよね。僕は弟とふたりでやっていて、弟がバイトで稼いでくれたから、絵に集中してずっと書き続けることができたんですが、そういうところへの同情票もあったり(笑)。画家の師匠なんていらないってことです。

M でもそういうルールから外れたことをしていたら、辛かったり、悔しい思いもたくさんしたんじゃない?

S それこそ若い頃は、画廊にファイルを送っても封が開かないまま返ってきたりしたこともありましたよ。僕は中学生・高校生の頃からグループ展をやったりしていて、そこでもやっぱり年功序列だったりするんですよね。才能とか技術とかセンスじゃなくて、大事なのは名前と年齢。反抗すると排除されちゃうんです。
僕も昔、ある画廊に絵を預けていたんですが、画廊に預けていた時に自分自身でも作品の販売をしたり作品を広めようと色々なセルフプロデュースをしたらこっぴどく怒られたこともありますし笑。
契約などのしばりが無いのに囲いこまれてしまう事があり何をやって良いのかやってはいけはないのか不透明な状態になる事があり個人的には居心地があまり良くなかったです。
画廊などから出ると不安になる気持ちはありましたが僕には弟が隣で支えてくれていました。
がむしゃらに一生懸命続けていれば見てくれてる人はいて新しく出会った共鳴した人達とまた新しい道を開いてこれました。
それに、山本耀司さんとコラボレーションしたことで、また別の道も拓けましたし。MEGUMIさんも、別の業種の人から影響を受けたりしていますか?

M 私は岡本太郎が大好きなの。亡くなる前の作品を見た時、それがすごく尖った作品でやっぱりスゴいなって思って。私も死ぬまでチャレンジする人でありたいって思った。ちなみに、ついこの間、太陽の塔を見てきたんだけどやっぱりすごくてエネルギーが溢れていたんだよね。彼自身も周りから理解されずに苦しんでいたことがあったと思うんだけど、そこから爆発していく情熱は笹田くんにもリンクするものがあると思うの。

S 岡本太郎さんの絵には”こんなこともやっていいんだぞ”っていう気概がありますよね。何にも囚われない自分ルールとエネルギーが前面に出ている。絵を見ると、自分の扉が開くような感覚があるというか。僕が描いた絵で、子どもたちにもそう思ってもらいたいです。そして、そこで僕が語ればもっと広がるし、深みも出ると思うんですよね。

M そのエネルギーというか情熱はどうやって維持してるの?

S 僕は毎日10時間絵を描いているんです。一日も休まず、毎日10時間。間があいて集中力が切れちゃうと、その間にアイディアとか思いって簡単に消えちゃうんですよね。だから、僕は電話はとらないし、携帯の電話帳にも家族しか入ってません。もっというと、恋愛とかそういった夢中になっちゃいそうなことは、あらかじめその可能性をあえて絶って、作品作りに100%集中できる環境をつくっているんです。絶対に情熱の炎を絶やしちゃいけないって。

M 恐ろしいほどストイックだよね。でもずっと同じことをしていたら飽きたりしないの? 私はデビューからグラビアをやって、バラエティをやって、芝居をやって、とシフトチェンジしながらやっているけど。

S そうですね、もちろん飽きたり、パッケージ化されてつまらなくなることはありますよ。だから常に自問自答しながらも、作品は常に変化していると思います。もしかしたら将来、全く違う絵を描いているかもしれませんね。たとえば、学生の頃から孔雀の絵を描いているんですけど、最新作はこのテーブルに置いてあるもので、こんなに大きなものに進化してたりします。

M これ、スゴいよね、そのエネルギーはどこから来ているの? どこかからインスパイアされたりしてるの?

S いえ、作品を作る前にあえて他の人の作品を観たりとかはないですね。インプットはほとんど無くて、基本的に今まで生きてきた日常から入ってきたものを、内から湧き上がるエネルギーに任せて作品に仕上げてます。だから、多分作品に出ているモチーフは、子供の頃に見た漫画とかゲームとか、インターネットの世界とか、そういったものが如実に出ていると思います。

M 頭の中どうなってるの?(笑)。本当にスゴいよね。ちなみに、笹田くんにとって想いを伝えるっていうことはすごく大事なことだと思うんだけど、若い人たちにはどんなことを伝えたい?

S やっぱり大人が言うことが全部正解じゃないってことは覚えておいてほしいですね。格好良いロックスターは、みんな音楽の専門学校に行ったかって話で(笑)。積極的に動いて、必要があれば勇気を持ってレールから外れてほしい。今回の、MEGUMIさんと僕のコラボレーションのように、色々なことにチャレンジしてほしいです。そうすれば、お互いに作用しあっていいものが生まれるし、よりたくさんの人にも見てもらえますから。

M なるほど。これからも本当に楽しみだよ。ちなみに今後の展望は? 海外?

S そうですね、海外はまた行きたいと思っています。それと、芸術家のフィールドからはみ出すことをやりたいですね。たとえば、今回は音楽とコラボして作品を作っています。用意された音楽を聴いて、それを僕が絵におこして、さらにそこから音楽ができる、というプロジェクトとか。4月には展示もあるんですが、そこでは一週間一日中その想いをひたすら喋る予定です(笑)。

プロフィール
笹田靖人
現代美術家
1985年生まれ。岡山県出身。
0.3ミリペンを使い細密画を描く現代美術家。
見るものを圧倒する、緻密で奔放な作風が特徴。
“画家”という枠に収まらず、ファッションブランドYohji Yamamotoとのコラボレーションなど、様々なフィールドで活躍する。
アート界だけにとどまらず、今後は世界を舞台にさまざまな活動が予定されている、いま最も注目のアーティスト。
Instagram:@yasuto_sasada

photographer:Takahiro Takinami